豊穣の海の恵み「ハモ」を
丼に活かす
徳島県の南東部に位置する阿南市は、四国最東端にあたる。世界一の発光ダイオード生産企業が市内にあることから、LEDを活用したイルミネーションが市内のあちこちで輝く。また、環境庁が水質調査で「日本一美しい海」とした北の脇海水浴場もあり、豊富な魚類は、豊穣の海の恩恵でもある。
そのなかでも「ハモ」の漁獲は年間300トンと全国有数。その多くは京都に送られ、夏の高級食材となる。初夏の「ハモ」のメスは産卵前で、脂が乗り旨味が増す。
その淡白な味は日本料理の食材だと思われがちだが、ムニエルやフライなどの西洋料理に使っても美味しい。しかも、低カロリー、高タンパクという理想の健康食でもある。
地産地消の考えに沿い、「ハモ」を広くPRをしようと、阿南商工会議所青年部が平成23年(2011)10月に、新たなご当地グルメ「あなん丼」を誕生させた。
あなん丼の認定基準は、「阿南産のハモを使用」「その他の食材もできるだけ阿南産を使用」「自店で1年間提供できる」「阿南への愛情が感じられる」の4項目。また、「ハモ」以外の阿南産食材を使った丼は「創作あなん丼」として認定している。
阿南商工会議所青年部ビジネス研修委員会委員長の峰浩介さんは、「地元メディアに取り上げていただき、知名度が少しずつ上がってきた。この味を全国へ発信していきたい」と語る。
「あなん丼」の味を求めて、海の近くの橘町にある『阿波橘海産』に向かった。ここの「あなん丼」は、「ハモ」をカツにして卵でとじ、たっぷりの海苔とネギを載せる。カツ丼の要領だが、カツを齧ると、ぷりぷりの身が顔を出し、タマネギと卵の甘さが淡白な「ハモ」の味を引き立てる。しかも、汁がついて730円という安さだ。
店長の守野周平さんに美味しさの秘訣を伺うと、「うちは、漁船を持っているから、いつでも新鮮なハモを使える」とのこと。獲れたての「ハモ」を味わう贅沢は、京都ではなく、阿南で体感できるのだ。
「ハモ」の歯は鋭く、噛みつかれると大ケガをする。美味しさには危険も伴うということなのだろうか。 |